太平洋とインド洋の間に赤道をまたいで17,000を超える島々からなるインドネシア共和国。首都ジャカルタがあるジャワ島の、ほぼ中央に位置する古都ジョグジャカルタから約42km、ヤシの樹海が広がるケドウ盆地に写真のボロブドゥール遺跡がある。8〜9世紀前後に約50年の歳月をかけて建造された世界最大級の仏教遺跡だが、建造後1,000年以上も密林の中で火山灰に埋もれていた。
後にシンガポールの港湾や都市の整備を進め、現在の繁栄の基礎を築いたトーマス・ラッフルズ(1781-1826)が1814年に発見。以来、1907年のオランダ主導による修復や1973年のユネスコ主導による大規模な保存・修復工事、1983年の日本のODAによる史跡公園整備などを経て、1991年には世界文化遺産に登録された。
遺跡の最下部の基壇(第1層)は一辺の長さ約123mの正方形で、その上に方形壇が5層、さらにその上に円形壇3層の9層からなる、高さ約34.5mの階段ピラミッド状の立体構造だ。上空から見ると頂上の大ストゥーパ(釣鐘状の仏塔)を中心とした曼荼羅のように見える。
方形壇には左右の石壁にレリーフが彫られた回廊が巡らされている。第2層の回廊にはブッダの物語を表現したレリーフ、その上の回廊には大乗仏教を説くレリーフが延々と続く。その総数は1,400面以上、登場人物は1万人を超え、造った人々がいかにブッダとその教えを愛し、永遠に残すことに情熱をかけたかがわかる。
第5層の回廊の階段を上がると視界が開け、ストゥーパが林立する円壇に出る。ここからの眺め、特に日の出は感動的だ。近隣のホテルで早朝、暗いうちに出発して遺跡の頂上から日の出を楽しむサンライズツアーが実施されていたり、タクシーをチャーターしてくれたりするので、ぜひ活用してほしい。密林を覆っていた霧が徐々に晴れてきて、東の空が明るくなり、ストゥーパがやわらかな琥珀色の光に包まれていく神秘的な光景に、古(いにしえ)の人々は、あまねく世を照らす御仏の慈愛を感じたことだろう。
ボロブドゥール遺跡から約3kmの高台にある、遺跡を模した白亜の石造りのアマンジウォは、世界中の旅人が憧れるアジアンリゾート(右)。
レリーフの総延長は約5km。回廊の左右に続く。文字が読めない人でもブッダの物語や教えがわかるという手法は、キリスト教のステンドグラスやイコン(聖像画)にも見られる(中)。
72基あるストゥーパの中には一つひとつ仏像が鎮座している。
かつてその指に触れると願いごとが叶うとされた「幸福の仏像」は、遺跡保護の観点から触れることができなくなった今でも人気が高い(左)。
地球の歩き方 ガイドブック
インドネシア
世界遺産のボロブドゥール&プランバナン、首都ジャカルタ、王宮の古都ジョグジャカルタ、コロニアル都市スラバヤ。見どころ満載のジャワ島はじめ、バリ島、ロンボク島、スマトラ島、カリマンタンなど網羅。
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