ノルウェー西部の海岸線には世界最大のフィヨルド地帯がある。フィヨルドとはノルウェー語で「内陸部へ深く入り込んだ湾」を意味する言葉。その名の通り、何百万年も前、氷河の浸食によって削られたU字型やV字型の谷に海水が浸入してできた峡湾だ。なかでも世界中から多くの観光客が訪れるのが、5大フィヨルドと呼ばれる「ガイランゲル」、「ノール」、「ソグネ」、「ハダンゲル」、「リーセ」の5 つ。
細長い天然の水路は水深が深いため、大型のフェリーも航行できる。また、拠点となる町から鉄道やバスの便もある。いずれも景観がよく拠点となる町からのアクセスも便利だが、それぞれが離れているので5大フィヨルドをすべて回るには最短でも1週間はかかるだろう。どのフィヨルドに行くか事前にじっくり計画を立てて旅をしよう。ベストシーズンは5月中旬から9月中旬頃。特に白夜になる6月から8月は人気が高い。10月に入ると観光フェリーやガイドツアーはほとんど運休となってしまう。ただし、ヨーロッパ本土で最も長くて深い「ソグネフィヨルド」だけは、一年を通して観光することができる。
僕のおすすめは「ガイランゲルフィヨルド」。海岸線から120kmも奥まったところにあるがゆえに、手つかずの荒々しい自然に囲まれた圧倒的な美しさは「フィヨルドの真珠」と讃えられるほどだ。2005年に「西ノルウェーフィヨルド群 - ガイランゲルフィヨルドとネーロイフィヨルド」として、世界自然遺産に登録されている。「ガイランゲルフィヨルド」の最深部、山の斜面に拓かれたガイランゲルには、ハイシーズンには70万人の旅行者が訪れる。小さな村だがフェリー発着所やバスターミナルがあり、観光案内所やホテル、レストランなどもある。じゅうぶんな時間があって天候が良ければ、一泊してハイキングを楽しみたい。ガイランゲルからオスロ方面に抜ける山の中腹にあるフリーダールスユーヴェット展望台からは、写真のように鳥の視点で雄大な景色と行き交うフェリー、そして村の営みを一望することができる。
切り立つダイナミックな渓谷が父だとすれば、紺碧の入江は母のように、人々の営みをおだやかに受け入れる。この風景は、その昔、バイキング船が行き交った時代とそんなに変わらないことだろう。
フェリーは観光だけではなく住民にとっても生活の足。フィヨルドにはさまざまなフェリー網が張り巡らされ、運賃も安く、車に乗ったまま移動できる(左)。
フィヨルドはおだやかな内海のため、船旅は揺れも少なく快適。フィヨルドに流れ込む滝など、水路ならではの光景にも出会える(中央)。
フィヨルド地帯には歴史があるスターヴ(木造)教会が点在する。写真はディズニー映画『アナと雪の女王』に登場する氷の城のモデルとされ話題になったボルグン・スターヴ教会(右)
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