沖縄の人々を静かに見守る
グスクと御嶽

2000年に「琉球王国のグスク及び関連遺産群」が日本としては11番目の世界遺産に登録された。具体的には首里城跡、勝連(かつれん)城跡、中城(なかぐすく)城跡、今帰仁(なきじん)城跡、座喜味(ざきみ)城跡の5つのグスク、及び園比屋武御嶽石門(そのひゃんうたきいしもん)、識名園(しきなえん)、玉陵(たまうどぅん)、斎場御嶽(せーふぁうたき)の4つの関連遺跡で構成されている。
グスクとは15世紀から約450年にわたって沖縄諸島を中心に栄えた琉球王国の城のこと。写真は沖縄本島中部の東海岸、勝連半島にある「勝連城跡」。標高約98mの小高い丘に12~13世紀頃築かれた東西に細長いグスクで、5つの曲輪(くるわ)がそれぞれ琉球石灰岩の切石を使った曲線状の城壁で囲まれている。最も高い一の曲輪から望む北の金武(きん)湾、南の中城湾など360度に開けた風景は、息をのむほど素晴らしい。
グスクは支配者の居城と同時に信仰の中心でもあった。そのため、城内には「御嶽(うたき)」が設けられている。御嶽とは琉球古来の神々が降臨し、人々が祈りを捧げる聖地で、自然の岩や石を利用したもの、鳥居や祠があるものなど場所も形態も祀っている神もさまざまだが、信仰する人々にとっては特別な存在だ。ちなみに首里城と神の島・久高島を結ぶ直線上にある世界遺産の斎場御嶽は、沖縄最高の聖地として知られる。
勝連城跡のふもとには地域の人々に名君と慕われた勝連グスク10代目城主・阿麻和利(あまわり)の名を冠した「あまわりパーク」の整備が進められていて、2021年10月に歴史文化施設がオープンし、話題を呼んでいる。首里城は2019年の正殿焼失が記憶に新しいが、2026年の再建を目標に工事がはじまっている。今年は1972年の沖縄本土復帰から50周年、NHKでも沖縄の風景や料理が印象的な連続テレビ小説「ちむどんどん」が放送された。沖縄では観光地も郷土料理も柔軟に変化している。しかし、何世代も変わらず人々の営みを静かに見守ってきたグスクや御嶽を訪れれば、日本やアジアの影響を受けながらも独自に発展した琉球王国のDNA、そして、激動の歴史を生き抜いてきた沖縄の人々の精神性を垣間見ることができるだろう。

首里城の「守礼門」は16世紀、中国の牌楼(やぐらのある門)の流れをくむ伝統的な建築様式で建てられた。戦災で焼失し、1958年に再建(左)。斎場御嶽の奥に2つの巨岩が寄りかかるようにして立つ場所がある。隙間にできた三角形の空間を通り抜けると三庫理(さんぐーい)及び拝所・チョウノハナがある。一般には立ち入りはできない(中央)。
そば粉を使わず小麦粉だけを使う「沖縄そば」の中でも一番人気なのがソーキそば。豚の骨付きあばら肉を煮込んだ「ソーキ」をトッピングするのが特徴で、元祖は諸説ある(右)。

「おいしいテーブル」では沖縄のレシピ「アンダンスー(油味噌)のおにぎり」を紹介!

WEB限定
アザーカット
Other Cut 450年繁栄した琉球王国の史跡

  • 斎場御嶽 久高島遥拝所
    海の向こうにうっすら見える平らな島・久高島は「神の島」と呼ばれ、東の海の彼方にあるという楽園「ニライカナイ」へとつながる聖地として信仰を集めてきた。琉球王朝時代の歴代国王の巡礼の地としても知られる。

  • 中城(なかぐすく)城跡
    中城村と北中城村にまたがる標高 150m~170mの石灰岩丘陵に立地。二方を崖に囲まれた天然の要害(守りやすく攻めにくい地形)に建てられた6つの郭からなる山城で、眺望は風光明媚。2006年、「日本100名城」に選ばれた。

  • 今帰仁(なきじん)城跡
    沖縄本島の北部、本部半島にあり、首里城とほぼ同面積の沖縄を代表する名城。毎年1月中旬〜2月初旬はカンヒザクラ(寒緋桜)の名所としても親しまれている。2006年、「日本100名城」に選ばれた。

  • 識名園
    首里城から徒歩30分、琉球王国王家最大の別邸。1799年に完成し、中国からの使節をもてなす場所として使われた。園内に湧き出る育徳泉(いくとくせん)には、天然記念物のシマチスジノリ(淡水産の紅藻)が生育する。

県名 : 沖縄
交通 : 沖縄の那覇への直行便は新千歳空港、関西国際空港、福岡空港など主要な空港から日本航空、全日空などが運航しており、羽田空港からは約3時間、運賃は往復7万円前後。
勝連城跡まではバスを利用した場合那覇バスターミナルから約1時間30分、レンタカー利用の場合空港から沖縄自動車道経由で約60分で到着する。(2022年4月現在)
※上記ルート案内は一例です。※新型コロナウイルスの影響で各地のフライト状況、料金等に変更の可能性があります。最新情報については、各航空会社の公式ウェブサイトなどで確認してください。

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